聖(性?)バレンタインデー 後編
バレンタインデー当日。
出勤すると、そこは地獄絵図。
夕方から夜に掛けての時間帯は、それはそれは大盛況。満室御礼!
飲食の注文やその他いろいろ、ひっきりなしになり続ける電話。
いつもより少しだけ早く出勤してお手伝いする。
深夜1時を回ると、少しずつ落ち着きを取り戻してひと段落。
悲劇はここから始まるのである。
お茶を入れ一息つきながら、同僚とマッタリ談笑。
だいたいは、
「今年は何事も無いと良いねー」
という話である。
全く持って物騒だ。
少しずつ落ち着きを取り戻しているといってもそこはバレンタイン。いつもの3倍ぐらいのテンポで客は入って来る。
そんな時、1台のタクシーが入って来た。
こんな時間帯にタクシーということは、
8割方、水商売関係の方である。
統計を取ったわけではないが、勘で良く当たる。
続いて軽自動車が入って来た。
来客パターンは様々なので、その辺は然して気にしないでいた。
タクシーで来たお客さまが
2人で
入室したのを確認して、次に入って来るであろう軽自動車のお客さまを待つ。
5分ほどすると女性2人がロビーに現れた。
同性同士の入室も、特に拒否することはないので黙って見守る。
入室したい部屋番号のボタンを押してからエレベーターに向かうように案内表示がされているのに、
その2人は
精算窓口に来た
のだ。
「同性同士でも大丈夫ですか?」という問い合わせだと思い、気楽に構えていた従業員2名。
しかし、彼女達の口から発せられたのは…、
『さっきのタクシーの人、どこの部屋に入ったかわかります??』
一瞬の沈黙と同時に、次の言葉が脳内を駆け巡る。
うわー、今年はコレかよ…
こんなバレンタインのプレゼント、
貰いたくねー…
この手のパターンは100%
浮気調査
である。
しかし、当然「守秘義務」があるため、たとえその部屋がわかっていても教えてはならないのだ。
この場合も、「立て続けにお客様が入室したのでわからない」の一点張りで対処する。
あまりにもしつこい場合、「教えてあげたいが、本当にわからない」などとバリエーションを付けることも忘れない。
(念のために言うが、実際、本当にわからない時もある)
ここまで言えば、ほとんどの人が諦めてくれるが、彼女たちは手強かった。
なんと、
部屋にいる旦那に電話をかけた
のだ。
仮に電話が繋がったとして、部屋番号を聞き出したとしても、
その部屋から来客を拒否されれば、部屋を開けることは出来ない。
運良く(?)部屋番号を聞き出した彼女たちは、その部屋を開けてくれと言う。
室内にいるお客様に確認の電話し、了解を得た上でオートロックの施錠を解く。
「深夜の時間帯なので、20分以内にしてほしい」ことを告げ部屋に通すことになった。
ここで、新たに問題が発生。
ヤ○ザ風の男性も一緒に部屋に行ったのである。
今一度部屋に電話を掛けて、「深夜の時間帯であるため、大きな声を出さないでほしい」ことをお願いする。
何せ事情が事情である。
『刃物でブスッ』
なんてことがあった日には、それこそ夫婦の修羅場が警察沙汰である。
事情聴取は面倒くさいので勘弁願いたい。(経験者)
そんな思いを抱えながら待つこと20分。約束の時間が来たので電話をする。
「もう帰るから…」というので施錠を解除し、3人が出てくるのを待つ。
待つ。
ひたすら待つ。
しかし、10分以上経過しても出て来ないのである。
これ以上待てないので、
意を決してその部屋に向かう。
浮気の現場(修羅場?)に突入である。
ドキドキもワクワクも無い。あるのはビクビクとガクガクである。
こんな状況じゃ、いくら笑顔まぶしくシャモジを持って突撃するヨネスケだって遠慮するだろう…
そんなことを思いつつ、背に腹は代えられぬと部屋のチャイムを押す。
「これ以上時間がかかるようなら、他のお客に迷惑がかかるので帰ってほしい」と伝える。
もちろん、平身低頭に。接客の基本である。ひたすら頭を下げるべし、下げるべし、下げるべし。
他のお客さまにも迷惑が掛かるが、こちらにも良い迷惑が掛かっているのである。
いくら仕事とはいえ、勘弁してほしいのが本音である。
意外にも(失礼)聞き分けが良く、3人ともすぐに退室。
おまけに、旦那も不倫相手の女性も一緒に退室。
何事も無かったかのように、静かに空気が流れはじめる。
ここまでの所要時間、
約40分
もちろん、ルーム料金4800円は
しっかり頂きました。
浮気の代償
が4800円で済んで良かったね(良いのか?)
ラブホテルと言う性質上、不倫とか一夜限りの関係のお客様もいるのはわかっております。しかし…
修羅場だけは勘弁して下さい。
切なる願いです。
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